トップ >第76回正倉院展
観覧には原則、事前予約制の「日時指定券」が必要です。当日各時間枠の開始時刻まで販売し、予定枚数に達し次第、販売を終了します。日時指定券の購入方法の詳細はこちら。
会期 |
令和6年(2024年)10月26日(土)~11月11日(月) ※会期中無休 |
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会場 |
〒630-8213 |
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開館時間 |
午前8時~午後6時
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料金 |
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お問い合わせ |
TEL.050-5542-8600(奈良国立博物館ハローダイヤル) |
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主催 |
奈良国立博物館 |
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特別協力 |
読売新聞社 |
正倉院展は、太平洋戦争が終わった翌年の昭和21年(1946年)に初めて奈良で開かれ、33件の宝物が展示されました。敗戦でつらい思いをしていた人々は、展覧会で伝統と文化のすばらしさを再認識し、勇気づけられたといわれています。以来、古都・奈良の秋を彩る恒例の行事となり、国内外の多くのファンを魅了してきました。
76回目となる今年の正倉院展には57件が展示されます。奈良時代に聖武天皇が使ったとされる肘置き「紫地鳳形錦御軾」や、古代では珍しい七宝を施した鏡「黄金瑠璃鈿背十二稜鏡」など華やかな宝物が注目されます。また、紅色に染めた象牙の表面を彫刻した物差し「紅牙撥鏤尺」や、貴重な素材をふんだんに使った寄せ木細工の「沈香木画箱」といった細部も美しい宝物にも引きつけられそうです。
今年は、ガラス製の装身具など、宮内庁正倉院事務所が最新の技術でよみがえらせた再現模造品も多く展示されます。宝物とあわせて鑑賞することで、古代の人々の技や心意気に思いをはせ、いっそう宝物の魅力を感じ取ることができるでしょう。
このサイトでは、今回展示される宝物から10件を紹介します。
- ☆宝物の写真をクリックすると解説と写真が表示されます。
花鳥背円鏡(北倉)
大型の丸い鏡で、裏面にあたる背面には、わきたつ雲の中に草花や飛ぶ鳥などが浮き彫りになっています。材質は白銅という、スズを多く含む青銅です。詳しい分析で、唐の時代に中国で作られた鏡に成分が近いことがわかり、この鏡は中国から日本に渡ってきたとみられます。聖武天皇の愛用品を光明皇后が東大寺の大仏にささげた際の目録「国家珍宝帳」に記されている品にあたると考えられています。背面の繊細なデザインから、大変優れた品として天皇の身近に置かれていたのでしょう。今回は、鏡を納めたとみられる漆塗りの箱なども展示されます。
直径31.7cm 縁の厚さ0.8cm 重さ4061g
鹿草木夾纈屏風(北倉)
大きな木の根元に2頭の鹿が向かい合って立つ構図が特徴的です。木の上には鳥が飛び、地面にはさまざまな草花が咲いています。「夾纈」とは、板に文様を彫った型で布を挟んで染め上げる技法で、この屏風は布地を縦に折り、同じ型で半分ずつを左右対称に染めたと考えられています。木の下にペアの動物を表す文様は西アジアが起こりとされ、奈良時代の国際交流がうかがえる正倉院宝物といえます。「国家珍宝帳」には草木や鹿をモチーフにした屏風が17組記されていて、この屏風はそのうちの一つにあたります。
長さ149.5cm 幅56.5cm
紫地鳳形錦御軾(北倉)
クッションのように使う肘置きで、「国家珍宝帳」に載っている宝物です。エックス線撮影によって、内部はマコモという植物の繊維を束ねて畳表で巻き、さらに真綿を詰めて麻布でくるんでいることがわかっています。表面には絹織物の「錦」が貼られ、全体として弾力性と柔らかさを兼ね備えた作りになっています。錦には、中国の皇帝とかかわりの深い想像上の鳥「鳳凰」を、古代ギリシャやローマが起源の「ぶどう唐草文」という文様で丸く囲んだデザインがあしらわれています。天皇が身近に置くのにふさわしい風格のある品です。
高さ20cm 長さ79cm 幅25cm
*展覧会では、宮内庁正倉院事務所が現代の技術で再現した模造品も並びます。
花氈(北倉)
羊毛などを圧縮したフェルトの生地に模様をデザインした敷物を「花氈」といいます。中央アジアの遊牧民の作った敷物がルーツで、中国・唐の時代には特に華やかな作品が作られました。正倉院には大小の31枚が伝わっていて、この宝物も材質調査によって、大陸から輸入したものと考えられています。白い生地に藍色の花がちりばめられたデザインは、よく見ると、角張った葉をもつ濃い色の花と、丸みのある葉をもつ薄い色の花の文様があります。織物のように決まったパターンではない、悠然とした印象も受けます。
長さ233cm 幅121cm
紅牙撥鏤尺(中倉)
細工が美しい象牙製の物差しです。白い象牙を赤く鮮やかに染めた後、表面を彫って文様を表す「撥鏤」という技で仕上げられています。表の面は10の区画に仕切られて、複数の花の文様を組み合わせた「唐花文」と、想像上の動物の「麒麟」や鳥、翼のある馬、花の形をした角を持つ鹿が交互にあしらわれています。一方、裏の面には上半分に庭園のある建物が、下半分には鳥や草花が刻まれています。中国の唐では皇帝に物差しを差し上げるならわしがあり、それにならって日本でも儀式で用いられたと考えられています。
長さ30.7cm 幅3.1cm 厚さ0.9cm
碧瑠璃小尺、黄瑠璃小尺(中倉)
2つのガラス製の物差しは、実際に物を測るためのものではなく、組みひもで腰の帯から下げる飾りだったと考えられています。「碧瑠璃」は成分に鉛を多く含む鉛ガラスで、銅を混ぜた化学反応によって緑色になっています。表と裏には金の絵の具(金泥)で目盛りが引かれてます。一方の「黄瑠璃」は鉄分によって黄色になった鉛ガラスで、表裏の目盛りは銀の絵の具(銀泥)で付けられています。結ばれた組みひもで物差しはペアになっています。鮮やかに輝く飾りをどんな人が身につけていたのか、イメージがふくらみます。
長さ6.4cm、6.9cm 幅1.8cm、1.9cm 厚さ0.5cm、0.4cm
*展覧会では、宮内庁正倉院事務所が現代の技術で再現した模造品も並びます。
深緑瑠璃魚形、浅緑瑠璃魚形、碧瑠璃魚形、黄瑠璃魚形(中倉)
かわいらしい魚の形をしたガラス製アクセサリーです。碧瑠璃魚形はアルカリ石灰ガラス、ほかの3点は鉛ガラスとみられ、緑や青は銅を、黄色は鉄を混ぜることで色が現れています。ガラスの塊を削って魚の形に整え、目やえらの部分は線を彫った後に金や銀の絵の具(金泥、銀泥)で強調しています。ひもを通して腰の帯に付ける飾りだったのでしょうか。古代の中国では、魚はおめでたいことの象徴とされ、宮中に出勤する役人の通行許可証が魚の形をしていたとされます。そのなごりから日本でも装飾品になったと考えられています。
長さ6.3~6.8cm 厚さ1.2~1.3cm 重さ23.85~43.76g
*展覧会では、宮内庁正倉院事務所が現代の技術で再現した模造品も並びます。制作過程は正倉院展公式ページで紹介しています。
沈香木画箱(中倉)
仏にささげる物を入れる「献物箱」とみられる木の箱で、支える脚が付いています。ふたの表面は、海外産の高級木材「沈香」の薄板をひし形や三角形に切って貼り、その周囲に、同じく舶来の「紫檀」や象牙などさまざまな素材を幾何学模様に組み合わせた細工を巡らせています。脚の部分は、紺色に染めた象牙の表面を彫って文様を表す「撥鏤」の技法などで装飾されています。最上級の素材をふんだんに使って華麗に仕上げられた箱には、貴重なものを納めたのでしょう。細かな部分にも丹精を凝らす作り手の意気込みも感じられます。
縦28.0cm 横44.6cm 高さ14.6cm
伎楽面 酔胡従(南倉)
飛鳥時代に大陸から伝わった仮面劇を「伎楽」といい、天平のころには仏教の儀式などで盛んに披露されました。不明な点が多いのですが、当時使われた仮面は14種類の23面が一組だったようです。伎楽の終盤、ペルシャの王「酔胡王」に従ってお供の「酔胡従」8人が登場し、ひどく酒に酔った演技で観衆を楽しませたと考えられています。酔胡従は赤ら顔に大きく高い鼻、分厚い唇、太い眉毛が特徴で、桐材を彫ったこの面の頭髪部分には馬のたてがみとみられる毛が使われています。面の裏には墨で「捨目師」と書かれていて、作者の名前とわかります。
縦30.8cm 横24.3cm 奥行き30.2cm
黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(南倉)
正倉院宝物にはあわせて56の鏡があり、そのうちでただ一つの「七宝」の技法で飾った銀製の鏡です。七宝とは、金属の素地に粉状に細かく砕いたガラスを盛って色や絵柄を焼き付ける技法で、この鏡は古代の七宝の作品としても珍しいものです。12の角がある鏡の背面に、大小の花びらで中国・唐の時代や日本の奈良時代に流行した文様「宝相華文」が表されています。花びら形に切った銀の薄い板は黄、緑、濃緑という3色の釉薬であでやかに仕上げられ、鏡の周囲にはめ込まれた金の板とのコントラストも鮮やかです。
径18.5cm 縁の厚さ1.4cm 重さ2177g