第78回正倉院展

 正倉院展は、太平洋戦争が終わった翌年の昭和21年(1946年)に初めて奈良で開かれ、33件の宝物(ほうもつ)出展(しゅってん)されました。校倉造(あぜくらづく)りで知られる正倉院正倉(しょうそういんしょうそう)で約1300年もの間、守り伝えられてきた宝物のきらめきが、敗戦でうちひしがれた人々を勇気づけたといわれています。以来、古都・奈良の秋を彩る恒例(こうれい)行事となり、国内外の多くのファンを魅了(みりょう)してきました。


 今年も、国際色豊かな工芸品を中心に60件の宝物が公開されます。奈良時代、聖武天皇しょうむてんのうが身近に置いた、漆塗うるしぬりのペルシア風水差しや、鳥の文様を表した色鮮やかな碁石ごいしは、当時の宮廷の様子を物語るものです。そのほか、朝鮮ちょうせん半島から伝えられた仮面劇「伎楽ぎがく」で使われた西アジアの王様のお面や、「虹龍こうりゅう」の名前で伝わったテンのミイラなど、多彩な品々がそろいます。第1回の展覧会が開かれてから80年を迎える今年の正倉院展。ぜひ、実物を見に行ってみませんか。

主な出展宝物(おもなしゅっちんほうもつ)

このサイトでは、今回出展される60件の宝物の中から6件を紹介します。

  • ☆宝物の写真をクリックすると解説と写真が表示されます。
  • 漆胡瓶

    漆胡瓶(しっこへい)

  • 紅牙撥鏤碁子

    紅牙撥鏤碁子(こうげばちるのきし)

  • 伎楽面 酔胡王

    伎楽面(ぎがくめん) 酔胡王(すいこおう)

  • 金銅幡

    金銅幡(こんどうのばん)

  • 虹龍

    虹龍(こうりゅう)

  • 白瑠璃瓶

    白瑠璃瓶(はくるりのへい)

正倉院には、聖武(しょうむ)天皇が大切にされた品々をはじめ、今から1300年以上も前の宝物が伝わっているよ。古いもので後の時代へ残していく必要があるから、展覧会の時以外は見ることができないんだって
漆胡瓶

漆胡瓶しっこへい(北倉)

 聖武天皇ゆかりの品として伝わったペルシア風の形の水差しです。鳥の頭の形をしたふたが付いています。うるしりの表面は、シカや鳥、険しい山や草花などの細かな文様でかざられています。文様には銀が使われています。今の銀の色は黒ずんでいますが、かつては白銀色に輝く華やかな姿をしていたことでしょう。


 文様の表現技法は、中国・唐の時代に流行したもので、この水差しは、唐で作られたようです。都の長安ちょうあんは国際都市で、当時、多くのペルシア人が住んでいました。東西の文化の交流を物語る宝物です。


高さ41.3cm どうの直径18.9cm

紅牙撥鏤碁子こうげばちるのきし(北倉)

 象のきばを赤く染めて作られた碁石ごいしです。象牙を染めた後、表面をって牙の白い色を出し、文様を表す撥鏤ばちるという技が使われています。この技によって、花をくわえて飛ぶかわいらしい鳥の文様が表されています。ところどころに緑や黄色をして、アクセントを加えています。今回の正倉院展には、「紅牙撥鏤碁子」と、紺色の「紺牙撥鏤碁子」がそれぞれ10枚展示されます。


 聖武天皇の愛用品として伝わっており、宮廷での遊びの文化をうかがうことができます。


直径1.5~1.7cm 厚さ0.7~0.8cm

伎楽面 酔胡王

伎楽面ぎがくめん 酔胡王すいこおう(南倉)

 伎楽は、仮面をつけて、音楽にあわせて演じられました。612年、伎楽を中国で学んだという朝鮮半島の百済人くだらじんが、日本に来て教えたという記録があります。東大寺の大仏開眼かいげんのお祝いでも演じられました。


 このお面は、軽めの木材であるキリで作られています。お酒でっぱらった西アジアの王様を表したもので、大きな目に高い鼻が目立ちます。その特徴的とくちょうてきな顔立ちは人々にインパクトを与えたことでしょう。


縦39.2cm 横18.8cm おく行き24.9cm

金銅幡

金銅幡こんどうのばん(南倉)

 幡は、仏教の信仰しんこうのために使われる大事なかざりです。仏さまの前で、お堂の柱などにかけて用いられます。本来は布製のものですが、この宝物は、銅を金メッキした金銅製です。草花や鳥などの文様がかし彫りされているだけでなく、すずも付いています。1メートル70センチという大きさで、空間をはなやかに飾り、風で鈴がれると、美しい音色をひびかせたことでしょう。


長さ170cm 身のはば15.5cm

虹龍

虹龍こうりゅう(南倉)

 室町時代の将軍・足利義教よしのりが、正倉院を訪れたときの記録に、「龍の日干ひぼし」を見たと書かれています。この龍があるために、宝庫ほうこを開けるときには毎回雨が降るという言い伝えがあり、その時も雨が降ってきたと伝えています。この龍に当たると考えられているのが「虹龍」です。


 「虹龍」の名前で伝わっていますが、実体は、イタチに似た動物・テンのミイラです。テンは古くから日本にいますが、どのようないきさつで正倉院に伝えられたのかはわかっていません。


長さ23.0cm

虹龍

白瑠璃瓶はくるりのへい(中倉)

 下ぶくれのどうに、大きな取っ手がついた、ペルシア風の形をした水差しです。古代、中東もしくは西アジアのガラス工房で作られたと考えられています。あわい緑色を帯びた透明とうめいなガラスで、風化も、ひび割れもありません。正倉院が、長い歴史のなかで宝物を大事に守り伝えてきたおかげで、はるか昔のガラスが美しい状態のまま残され、今日のわたくしたちが目にすることができるのです。


胴の直径14.0cm 高さ27.2cm 重さ634g