Further Information見どころ

古都・奈良の秋の風物詩、正倉院展。およそ1300年もの時を超えて守り伝えられた珠玉の宝物に出会えるこの展覧会は、今年、第1回展が開催された昭和21年から80年を迎えます(過去3度は東京で開催)。
正倉院宝物(しょうそういんほうもつ)は、奈良時代に日本を治めた聖武天皇(しょうむてんのう)のご遺愛品を中心に、当時一級の工芸品から、人々の暮らしを物語る文書まで、多彩な内容の品々を擁(よう)する宝物群です。その数は実に9000件にものぼり、宝庫の開扉に天皇の許可を要する「勅封(ちょくふう)」等の制度のもと厳重に管理され、継承されてきた、世界でも他に類を見ない遺産です。

漆胡瓶(北倉)

漆胡瓶(北倉)

今年の正倉院展も選りすぐりの宝物が会場を彩り、ありし日の平城(なら)の都の記憶を鮮やかによみがえらせます。「紅牙撥鏤碁子(こうげばちるのきし)」・「紺牙撥鏤碁子(こんげばちるのきし)」(北倉25)をはじめとした聖武天皇のご遺愛品の数々は、天皇の身辺に置かれる品にふさわしく、洗練された美意識が光ります。中でも「漆胡瓶(しっこへい)」(北倉43)は、西方のペルシアに由来する水差しを東アジアの漆工の技術を用いて作った、当時の東西交流の象徴的存在としても注目されます。洗練された造形美を示す「白瑠璃瓶(はくるりのへい)」(中倉69)、西方起源の葡萄唐草文(ぶどうからくさもん)を精緻に鋳出した「鳥獣花背方鏡(ちょうじゅうかはいのほうきょう)」(南倉70)とともに、国際色ゆたかな世界を演出します。一方、格調高い書風を示す「梵網経(ぼんもうきょう)」(中倉34)や、躍動的な文様が不思議な魅力を放つ「密陀彩絵箱(みつださいえのはこ)」(中倉143)といった品々は、敬虔(けいけん)で力強い当時の人々の祈りの心を伝えます。また、近年、宮内庁正倉院事務所が技法や素材の調査を実施した古代の藺筵(いむしろ)の関連品もお目見えします。
平城京の時代を生きた人々の息づかいが感じられる今年の正倉院展を、どうぞご期待ください。