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【正倉院 モノ語り・コト語り】螺鈿紫檀五絃琵琶(1)

2022年05月06日

正倉院にまつわるモノ・ゴト、モノすなわち宝物とそれに関わるデキゴトや人が行なってきたコトを、宮内庁正倉院事務所の西川明彦・前所長に語っていただきます。

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螺鈿紫檀五絃琵琶


初回を飾るのは教科書のグラビア掲載率ナンバーワン宝物、螺鈿紫檀五絃琵琶。アイドルグループに喩えるとセンターに位置づけられよう。

「ラデン・シタンノ・ゴゲンビワ」と、外国人の名前のようであるが、正倉院宝物の名称には主材料、装飾、用途等の情報が盛り込まれている。

世界でただ一つだけ、八世紀から今に伝わる五本の絃を掛けた琵琶。ボディは紫檀という東南アジア産の高級木材。キラキラ光る夜光貝を用いた螺鈿細工で飾る。

オモテ側に貼られたべっ甲のバチ受け(捍撥)に螺鈿で表わされたラクダやウラ側の宝相華の絢爛豪華な装飾が目を引く。夜光貝は奄美以南で穫れるサザエに似た巨大な巻貝。べっ甲はタイマイというウミガメの甲羅で、螺鈿の花芯にもべっ甲をはめるが、裏に絵を描いて伏せて貼るという手の込みようである。

正倉院宝物は亡くなられた聖武天皇の遺愛品を光明皇后が東大寺の大仏さまに献納したことにはじまる。本品もその一つで、校倉造りの正倉の中に納められて伝わったため、良好な状態を保っている。

しかし、一三〇〇年近くの齢を重ねるなか、まったくの無傷では済まなかった。明治時代に大修理を受けた結果、今の姿がある。

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修理前の拓本:装飾が抜け落ちている(東京国立博物館蔵)
写真提供:東京国立博物館(https://webarchives.tnm.jp/) ※文様が分かりやすいよう、写真は加工しています。

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装飾の抜けた箇所は補われている

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