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2022年06月25日

【正倉院 モノ語り・コト語り】正倉院と東大寺献物帳

五絃琵琶という人気アイドルからはじめた本コラム。今回はその舞台、ヒノキで造られた正倉(しょうそう)とグループのメンバーリスト『東大寺献物帳(とうだいじけんもつちょう)』(献物帳)の話。

本来「正倉院」は役所や寺院の重要なものを納める「正倉」のある区域を指す一般名詞であるが、東大寺の正倉院が唯一残って固有名詞化した。

正倉は三角材を井桁(いげた)に組んで造った校倉造(あぜくらづく)り。間口約33m、奥行き約9.4m、総高約14m、床下約2.7mで、端数を省略しているが、実はすべて3で割り切れる。

当時の長さの単位は中国・唐の尺度が用いられ、その1尺がおよそ30cmであるため3の倍数になっている。ちなみに、三角形の校木(あぜき)の一辺の長さも約30cmである。

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正倉院宝物は天平勝宝8歳(756)6月21日、光明皇后が聖武天皇の四十九日忌に天皇の遺愛品を東大寺の大仏様に献納したことにはじまり、遺愛品約600点と薬物60種にそれぞれ品目リストが添えられた。

その後にも追加の献納が三度あり、その都度リストを添えて正倉に収蔵された。合わせて5巻を数えるリストを総じて『東大寺献物帳』といい、それぞれ外題などから「国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)」や「種々薬帳(しゅじゅやくちょう)」などの通称名が付く。

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東大寺献物帳

国家珍宝帳(部分)6行目に「螺鈿紫檀五絃琵琶」が記されている.jpg

国家珍宝帳(部分)6行目に「螺鈿紫檀五絃琵琶」が記されている

献物帳には名称や特徴、長さや重さなどの情報が記されており、それと現存する宝物の計測値とで当時の度(長さ)・量(体積)・衡(重さ)を換算することができる。

なお、当時の元号についても中国に倣って4文字となっている。

(前・宮内庁正倉院事務所長 西川明彦)


前回のコラム:
【正倉院 モノ語り・コト語り】螺鈿紫檀五絃琵琶(2)