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2024年10月26日

歴史を感じ、歴史から学ぶ 特別対談:トラウデン直美さん×小河 義美・ダイセル社長

【PR】第76回正倉院展 協賛記念 特別対談
歴史を感じ、歴史から学ぶ

多くの歴史ファンを魅了する「第76回正倉院展」が開幕しました。今年も正倉院展に協賛する株式会社ダイセルの小河義美社長と、Z世代でモデル・タレントとして活躍するトラウデン直美さんが対談。正倉院展の魅力から、宝物を守り継いできた技術に込められた人の思い、若い人たちが創り出す未来の日本の姿まで、話が弾みました。

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左:トラウデン直美さん 右:小河義美氏

天平の息吹が伝わる
正倉院宝物の魅力

小河 正倉院宝物の魅力は、国宝級でありながら生活感があるところです。光明皇后が聖武天皇ご遺愛の品を納めたというところに、やんごとなき人のロマンスを感じます。

トラウデン 当時の暮らしの中で、確かに存在していたものだと分かります。

小河 おっしゃる通りです。中にはささやかなものもありますが、皇后には思い出として必要だったのでしょうね。天皇の遺志を継いで仏教を広めなければという使命感もあり、孤独だったのだろうと思います。

トラウデン 他に物語を感じられる宝物はありますか?

小河 戸籍は一字一字が丁寧に書かれてあり、唐の律令に倣って日本は文化国家になるんだという気概を感じます。役人も気合いを入れて書いていることが、見ればすぐ分かります。

トラウデン ネットで調べて知った気になるのではなく、実際に見ることが大事ですね。

小河 見て、感じてほしいんです。今回「紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)」という物差しが出陳されますが、一番退色しやすい赤が、非常に鮮やかに残っています。いかに大事に保存されてきたか、意図をもって残されてきたかが伝わってきます。

受け継がれる技術
ものづくりの喜び

トラウデン 長く保存し管理するためには、知恵と技術を継承していくことが大切です。

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小河 技術は、いかに普遍化できるかも大事です。普遍的な技術が軸にあるから様々なカスタマイズができる。当社も840万件ほどの化学プラント操作のノウハウを8種41動作に標準化し、「ダイセル式生産革新」として他社にお使いいただいています。

トラウデン しっかりとした芯があってこそ、イノベーション(技術革新)が生まれてくるということですね。

小河 はい。当社の主力製品は木材由来のものであり、その製造工程もサステナブルなものにしようと「木を常温で溶かす技術」の実用化に取り組んでいます。この技術は、健康な森を再生し、産業資源を循環させて地域経済を活性化させる「バイオマスバリューチェーン」の構築につながります。サプライチェーン全体で取り組み、消費者の方に過度な負担がかからないよう、エコロジーとエコノミーの両立も図りたいと思っています。

トラウデン "我慢"が生じてしまうと、サステナブルは難しくなりますものね。私も生活者の一人として、クリエイティブに楽しみ方を考えていきたいです。

小河 消費するだけではなく、ものを作る喜びを知る人が増えればいいと思うんです。当社が世界で初めて作った「マイクロプラント」は、小さなガラス基板に張り巡らせた流路内で効率よく混合や反応、精製などができる「卓上型化学工場」です。大規模・高エネルギー型の従来の化学工場に比べ、「マイクロプラント」は低エネルギーで必要なものをムダなく作ることができます。将来、3Dプリンターと合わせて、ご家庭でモノづくりを楽しんでもらえたらと期待しています。

トラウデン 消費する部分で受け身になっているなと感じることはあります。能動的であることをもっと意識していきたいと思います。

次代へつなぐ
感じることの大切さ

小河 正倉院が素晴らしいのは、そこに美意識と国家の意思が感じられるからです。当時の日本は世界に対して門戸を開き、女性も大勢活躍していました。いろいろな文化や価値観が入った方がいい。これは国も企業も人も同じです。

トラウデン 知らないもの、分からないもの、違うものって「怖い」と思ってしまいがちですけれども、立場を置き換えて考えてみることが大切ですね。私も、違うことを「面白い!」とポジティブに捉えられるよう、マインドセットしておきたいなと思っています。

小河 ダイバーシティーに通じる考え方ですね。そのためには異なる様々なものに触れることが大事。正倉院展や、来年の大阪・関西万博が、いい機会になるでしょう。私は1970年の大阪万博で未来の技術を間近に見たことで化学者になる決心をしました。ただ、今度の万博は、精神的な豊かさを伝える場であるべきだと思っています。これからの社会を生きる上で、企業としてはただ生産性を追求するだけではなく、心の豊かさも追求しないといけないと思うんです。

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トラウデン 美意識や感情といった形のないものの共有は難しいけれど、いろいろなものを前に進める力になりますよね。自分はどんな世界で生きていきたいのかを問い直してみる機会になればいいのかなと思います。

小河 考えて出した答えは、人それぞれでいいと思います。私は国の方向性は、若い人の気持ちと文化的なものが相まって決まると考えています。ですから文化は大事にしないといけないし、若い人には自分と違うものにたくさん触れ、見て、感動してほしいんです。

トラウデン 私も正倉院展や万博に行って、自分の世界を広げていきたいと思います。

(2024年10月26日付読売新聞朝刊より掲載)


(プロフィール)

トラウデン直美さん
モデル・タレント

(とらうでん・なおみ)京都府出身、慶應義塾大学法学部卒。13歳で女性ファッション誌『CanCam』の最年少専属モデルとしてデビュー。SDGsなどの社会課題に関心を持ち、報道番組にも出演している。2021年1月より「環境省サステナビリティ広報大使」。

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小河 義美 氏
株式会社ダイセル 代表取締役社長

(おがわ・よしみ)1960年兵庫県生まれ。83年大阪大学基礎工学部化学工学科卒業後、ダイセルに入社。2019年より現職。90年代後半、次世代型化学工場構築プロジェクト推進室長として、素材産業における生産性向上手法である「ダイセル式生産革新」を考案した。

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https://www.daicel.com/

価値共創で社会と人々の幸せに貢献
100年続く大阪発祥の化学メーカー

株式会社ダイセルは1919年に、セルロイド製造会社8社が合併して誕生しました。「価値共創によって人々を幸せにする会社」を基本理念とし、「健康」「安全・安心」「便利・快適」「環境」をキーワードに、幅広い事業領域で有益な素材を提供しています。創業以来培ってきた植物由来セルロースの技術で、森林資源などを活用した新しいバイオマスプロダクトツリーの創出と、それを環境負荷の小さい方法で実現する革新的なプロセス技術の開発に注力し、カーボンニュートラル、循環型社会構築への貢献を目指しています。また、「ダイセル式生産革新」は、化学プラントにおける生産性を大幅に向上させた取り組みとして注目を集めています。

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株式会社ダイセルは、「第76回正倉院展」に協賛しています。